TARI TARI 第1話「飛び出したり誘ったり」

TARI TARI 第1話「飛び出したり誘ったり」

　白浜坂高校の高橋智子教諭が産休に入る日。その日は色々なことが起こった。

　高校三年生からの転入生である前田敦博がウィーンから来たこと。宮本来夏が教頭からバッサリと切られて声楽部を辞め、合唱部を立ち上げようと思ったこと。ひとりバドミントン部の田中大智が前田敦博の案内をしてあげたこと。音楽科から普通科に転科してきた坂井和奏に合唱部への誘いを断られたこと。沖田紗羽が自宅で飼っている馬に乗っていたこと。

　それぞれを切り取れば、世界のどこかでは日常で起きていることだろう。しかしその一コマ一コマは、偶然彼らが一ヶ所に集まったことで、意味のあるつながりを持って生きてくる。それが人生であり青春なのだ。
　そんな、江ノ島に暮らす高校生たちの、音楽にまつわる青春が始まるっぽい。

ネタばれ感想文

　家庭の事情で音楽科から普通科へと転科した少女と、才能がないと宣告された、歌を歌うのが大好きな少女。後者の少女に訪れた転機は、既に転機が訪れていた前者の少女を巻き込み、さらには周囲の少年少女を巻き込んで、物語が展開されていく。
　どこにでもある日常では、意外にも宮本来夏のような狂言回しの役割を担う人間というのは少ない気がする。確かに周囲を巻き込まずにいられない人間は多々いるが、目的意識を持って巻き込む人間は結構少ない。

　単純な私利私欲では、中々気持ちよく人は動かない。人を動かすには、話者を信じさせるか、相手の中にあるものに訴えかけるか、環境をそうなるように作り上げるかくらいしかない。今回の場合は、坂井和奏に対して二番目の説得がなされると言うことだろう。